雪の積もった河川敷に、スノーシューで絵を描いています。
もう4年になります。

使う道具はスノーシューだけです。下書きはしません。朝4時に描きはじめて、7時までに描き終えて立ち去ります。
この記事では、道具と描き方、それから4年分の作品をまとめました。
スノーアートとは、足跡だけで描く絵です
雪原を歩いて、その足跡を線にして描きます。絵の具も、刃物も、型紙も使いません。踏み固めたところが線になり、踏んでいないところが余白になります。

そばに立つと、雪を踏んだ跡が並んでいるだけです。
離れて、上から見たときにだけ、絵になります。
海外の人がやっているのを見て、やってみたくなりました
始めたきっかけは単純です。
海外や国内でスノーアートをやっている人がいると見聞きして、「やってみたい」と思いました。それだけです。
北海道に住んでいると、冬のあいだ、川べりはずっと真っ白な平面です。これだけ大きな紙が、毎年ただで用意されている。使わないのはもったいない気がしました。
道具は、スノーシューだけです


長靴に、赤いストラップで留めるだけです。専用の靴は要りません。
スノーシューを履くと、雪に沈まずに歩けます。そして踏んだところが、はっきりした跡になって残ります。この2つが、絵を描くのにちょうどいいのです。
私が使っているのは、Expert of Japan のアルミニウム製わかんじきです。軽くて、雪の上でも扱いに困りません。
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4年間、これ1つで描いています
| 道具 | スノーシュー(長靴に装着) |
| 描くもの | 自分の足跡だけ |
| 下書き | なし |
| 所要時間 | 約3時間 |
| 時間帯 | 朝4時〜7時 |
| 場所 | 近所の河川敷(橋の袂) |
ほかに持っていくものはありません。スコップも、ロープも、目印の杭も使いません。
濃く出したいところは、二度踏みします
線の太さや濃さは、踏む回数で変えています。
はっきり出したいところは、同じ跡を二度踏みします。溝が深くなるぶん影が濃くなって、遠くから見てもくっきり出ます。

ただし、これが足に堪えます。その部分だけ、歩く距離が単純に倍になるので。
絵の具なら、濃い色を塗ればいいだけです。雪の場合、濃さは体力で買うことになります。
下書きは、しません
いちばん聞かれそうなところだと思います。どうやって雪原に当たりをつけるのか。
答えは、つけていませんです。
頭の中のイメージだけで、いきなり歩き出します
描くものは、前もって頭の中でイメージしておきます。それだけです。紙に描いて持っていくこともありません。
当日、雪原に立って、ぶっつけ本番で歩き出します。
ズレたら、そこから直します
当然、ズレます。
でも失敗したとは思っていません。ズレたら、そこから修正すればいいと思って描いています。
踏んだ跡は消せませんが、周りに線を足していけば、形のほうが変わっていきます。雪原は広いので、逃げ場はいくらでもあります。
「完成」ではなく「時間切れ」で終わります
正直に書くと、描き上がったから終わっているのではありません。
7時までに描き上げたいと思って、必死になって歩きます。そして時間が来たら、「時間になったから、ここまで」という感覚で切り上げます。
下書きをしないことと、これは同じ話なのだと思います。完成の形を決めていないから、途中で終わっても、それが完成になる。
描くのは2月の後半、新雪が積もった晴れの日
いつでも描けるわけではありません。条件が揃う日を待ちます。
| 時期 | 2月の後半(とくに2月末) |
| 雪 | 新しく積もったばかりの雪 |
| 天気 | 晴れ |
2月末の雪は、サラサラです
2月末が、いちばん寒い時期です。
気温が低いほど雪はサラサラになります。この雪のほうが、きれいに描けると感じています。
天気予報と雨雲レーダーとにらめっこ
そのうえで、新しい雪が積もった、晴れの日を待ちます。
新しい雪でないと、前に歩いた跡や、人や動物の足跡が残っています。まっさらな面でないと、描きはじめられません。

そして晴れていないと、線が影になりません。曇りの日に描いても、撮ったときに写らないのです。
この2つが重なる日は、そう多くありません。天気予報と雨雲レーダーとにらめっこしながら、その日を待ちます。
雪の量は、下見で測ります
もうひとつ、雪の量があります。多ければいい、というものではありません。
| 深すぎる | 足が取られて、歩けません |
| 浅すぎる | 跡が残らず、模様になりません |
だから毎年かならず一度、下見に行きます。実際にその目で見て、頃合いを測ります。

下見の日は、描きません。雪の量を確かめて、それだけで帰ります。
下見と、天気予報と、雨雲レーダー。この3つで、その日を決めます。
朝4時に描きはじめる理由
人に会いたくないからです。
河川敷には、通勤や通学の人が通ります。描いているところを見られてしまうと、絵の面白さが半分になる気がしました。
だから朝のラッシュが始まる前に描き終えて、立ち去ります。
自分では「バンクシー状態」と呼んでいます。誰も見ていない時間に描いて、人が動き出す前にいなくなる。
3時間ラッセルした体は、毎回足が攣ります
絵の話をしてきましたが、やっていることは3時間のラッセルです。
雪をかき分けて歩き続けるので、最後は毎回、足が攣ります。翌日は筋肉痛です。
とくに二度踏みをしたところは、それだけ歩数が増えています。濃い線ほど、足にきています。
意外なのは、腰は今のところ平気だということです。私は椎間板ヘルニアで入院したことがあるのですが、この作業で腰にきたことはありません。
おそらく重いものを持ち上げないからだと思います。ただ歩いているだけなので。
撮るのは、橋の上からです
描く場所を橋の袂の河川敷にしているのには、理由があります。
橋の上から見下ろせるからです。
スノーアートは、上から見ないと何を描いたのか分かりません。ドローンは持っていないので、高いところが必要でした。橋が、その役をしてくれています。

翌日の夕方、観光客のような顔で

描いたその日に橋の上から撮ることもありますが、翌日の夕方に、もう一度行くことがあります。
そのときは、描いた人としてではなく、たまたま通りかかった人の顔で眺めます。
自分で描いておいて妙な話ですが、観光客気分で素知らぬ顔をして見るのが、けっこう楽しいのです。
そして、ふと思うのです。
バンクシーも、自分の作品を観光客に紛れて見に行っているのではないでしょうか。
描いて消えるところまでがバンクシーなら、戻ってきて他人の顔で眺めるところは、裏バンクシーです。たぶん、そっちのほうが楽しい。
光が低いほど、線は見えます
撮っているうちに気づいたことがあります。
足跡の溝は、横から光が当たって影ができたときに、初めて線に見えます。
曇りの日や、日が高い時間だと、雪はただ白いままです。早朝か、夕方。太陽が低いときのほうが、絵ははっきり写ります。
同じ絵を、2回撮ったものがあります。


別の作品に見えるかもしれませんが、同じ日に描いた、同じ絵です。
そして違うのは、光だけではありません。一日ぶん陽に当たって、雪そのものが変わっています。できたては角が立っていますが、翌日はしっとりして、溝の縁が丸くなります。
4年分の作品
2023年から、毎年1枚ずつ描いています。それぞれ別の記事にまとめました。
2023年 アイヌ模様

渦を巻く文様を、雪原いっぱいに連ねました。曲線ばかりなので、歩く距離が長くなった年です。
2024年 りんご

巨大なりんごと、菱形を並べました。曲線と直線が両方ある年です。
2025年 積み木の城

三角と四角を積み上げた城です。直線が多いぶん、ズレると目立ちます。
2026年 枯山水

同心円の波紋を、雪原一面に広げました。庭の砂紋を、雪でやってみた年です。
まとめ
| 使うもの | スノーシューと、自分の足だけ |
| 下書き | しない。頭の中のイメージだけで歩き出す |
| 線の濃さ | 濃くしたいところは二度踏み。そのぶん足にくる |
| 失敗 | ズレたら、そこから直す |
| 終わり方 | 完成ではなく、時間切れ |
| 時期 | 2月後半。新雪が積もった晴れの日を待つ |
| 時間 | 朝4時〜7時の3時間 |
| 見る場所 | 橋の上(当日、または翌日の夕方) |
| 体 | 毎回足が攣る。翌日は筋肉痛。腰は平気 |
特別な道具も、技術も要りません。スノーシューを履いて、雪の上を歩くだけです。
ただ、誰にも見られずに3時間歩き続けるというところだけは、少し変わっているかもしれません。
春になると、消えます
描いた絵は、いつまでも残るわけではありません。

雪が溶けはじめると、線から崩れていきます。地面が顔を出して、模様がまだらになって、やがて跡形もなくなります。
誰にも見られない時間に描いて、誰にも見られないまま消えていく。
それでいいのだと思っています。
雪はまた降ります。来年も、朝4時に出かけます。




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