【樽前山】林を抜けたら、いきなり裸の山だった|七合目から外輪山を周回する3時間

樽前山東山の山頂標識と噴気を上げる溶岩ドーム 腰痛と運動
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昨年6月の後半、北海道の樽前山(たるまえざん)に登ってきました。

札幌から車で走って、七合目まで上がって、外輪山をぐるりと周回して西山まで。歩いた時間はおよそ3時間、日帰りのひとり登山です。

この山でいちばん心に残ったのは、山頂の景色ではありませんでした。登っている途中、林が終わって、いきなり裸の山が現れた瞬間です。

早朝の七合目。駐車場はガラガラだった

樽前山は、七合目まで車で上がれます。登山口には七合目ヒュッテという建物があり、駐車場もここに。

樽前山七合目ヒュッテと早朝の駐車場
七合目ヒュッテ。早朝だったので駐車場はガラガラでした

出発は早朝。おかげで駐車場は空いていて、静かなスタートになりました。ここが標高660mなので、山頂まではあと360mほど登るだけ。数字だけ見ると、ずいぶん親切な山です。

6月後半の服装は、薄手の上着程度で十分でした。

林を抜けたら、いきなり裸の山だった

歩き出してしばらくは、背の低い林の中を進みます。両側は緑。足元は土と木の階段。ごく普通の、気持ちのいい登山道です。

樽前山七合目からの登山道、両側は低い林
登り始めは緑に囲まれた道。ここだけ見れば、どこにでもある山です

ときどき林が切れて、下界が見えます。この日は雲海が出ていて、木々の向こうに白い海が広がっていました。

林の切れ間から見えた雲海
林の切れ間から。もう雲の上にいるのだと気づきます

そして——ある地点で、林が終わります。

本当に、突然でした。

緑が途切れて、目の前に灰色の砂礫の斜面が広がる。木が一本もない。隠れるものが何もない。さっきまで葉ずれの音がしていたのに、急に風の音だけになる。

樹木のない砂礫の稜線
林が終わった先。同じ山とは思えません

どこか別の惑星に、たどり着いたような

しばらく歩いていて、ふと思いました。

ここは、地球ではないのかもしれない。

灰色の砂礫と、へばりつくような苔だけ。木も、草むらも、影もありません。映画で見る月面や、どこか名前も知らない惑星の地表。そういう場所に、間違えて降り立ってしまったような気分でした。

札幌から車で行ける山です。それなのに、こんな景色の中に立てる。

ここが樽前山でいちばん面白いところだと思います。自然が切り替わる境目を、肌で感じられる。

樽前山は活火山です。噴火のたびに、上のほうは焼かれて、木が育たない。だから林の限界がくっきり出る。そういう理屈は後から知りましたが、歩いているときはただ「うわ、変わった」と思っていました。

硫黄の匂いと、近づけない溶岩ドーム

裸地に出ると、正面に溶岩ドームが見えてきます。もくもくと噴気を上げていて、遠くからでもはっきり分かる。

噴気を上げる樽前山の溶岩ドーム
噴気を上げる溶岩ドーム。生きている山だと分かります

近づくにつれて、硫黄の匂いがしてきました。

意外だったのは、音がしなかったことです。あれだけ煙を吹いているのだから、シューという音でもするのかと思っていましたが、静かなものでした。熱も感じません。

それもそのはずで、溶岩ドームには近づけません。外輪山の内側は立入危険区域とされていて、ロープが張られています。登れるのは外輪山まで。

火山ガス(硫化水素・二酸化硫黄)は空気より重いので、風のない日の窪地はとくに危険だそうです。ロープの手前で眺めるのが正解です。

雲海の下に、支笏湖がある

外輪山に出ると、視界がいっぺんに開けます。

この日は雲海でした。眼下いっぱいに白い雲が敷き詰められていて、その下に支笏湖があります。

雲海の下に支笏湖がある風景
この雲の下に、支笏湖があります

見えないのに、そこにあると分かっている。不思議な気分でした。湖が見えたら見えたで嬉しかったでしょうが、こういう日もいいものです。

樽前山から見下ろす雲海
どこまでも続く雲海。しばらく足が止まりました

そして歩いているうちに、途中からすっかり晴れ渡ってきました。

山頂や中腹から見えたのは、風不死岳(ふっぷしだけ)、恵庭岳、そして太平洋。海までしっかり見渡すことができました。

標高1,022m。決して高い山ではないのに、湖と、山と、海が一度に見える。これが樽前山の贅沢なところだと思います。

雲海の上に昇る朝の太陽
早朝に登ったごほうび

雲が、尾根を越えてくる

歩いていると、雲海のほうから雲がせり上がってきて、尾根を越えていく場面に出くわしました。

尾根を越えてくる雲
雲が尾根を越えてくる瞬間。動きが見えるほどでした

雲が「流れる」というより「乗り越えてくる」という感じで、風の強さがそのまま目に見えるようでした。

風不死岳へは、行かなかった

樽前山からは、隣の風不死岳(ふっぷしだけ)へ縦走できます。時間的にも、行けなくはありませんでした。

しかもこの日は晴れていて、風不死岳がはっきり見えていました。あそこまで歩いていけるのか——正直、かなり心が動きました。

でも、行きませんでした。

風不死岳にはヒグマが出るかもしれないと聞いていたからです。ひとりで歩いていたこともあって、今日は西山までにしておこう。グッと堪えました。

外輪山の砂礫の登山道
外輪山の道。ここを西山まで歩いて折り返しました

行かなかったことを、後悔はしていません。やめておく理由がひとつでもあるなら、やめておく。山でも自転車でも、私はそうしています。そのほうが、次もまた来られるので。

ヒグマの騒ぎが落ち着いたころに、今度こそ風不死岳まで縦走してみたいと思っています。

樽前山登山の基本情報

山名 樽前山(東山) 1,022m ※北海道・苫小牧市/千歳市
登山口 七合目ヒュッテ登山口(標高660m)。駐車場あり
今回のコース 七合目 → 東山 → 外輪山を周回 → 西山 → 七合目
所要時間 約3時間(距離およそ6km)
立入規制 外輪山の内側(火口原・溶岩ドーム)は立入危険区域。登山は外輪山まで
火山ガス 硫化水素・二酸化硫黄。空気より重いため、無風時の窪地は注意
今回の服装 6月後半・早朝で、薄手の上着程度
ヒグマ 風不死岳方面は出るとのこと。鈴などの対策を

※火山活動の状況によって規制内容は変わります。登る前に必ず苫小牧市や気象庁の最新情報を確認してください。

下山後は丸駒温泉へ

下山して、支笏湖の北岸にある丸駒温泉に立ち寄りました。

ここは支笏湖の湖畔に建つ一軒宿です。そして名物が、ちょっと他にはないお風呂なのです。

天然露天風呂へ続く渡り廊下。提灯に「天然露天風呂」とあります

湯船の底から、直接お湯が湧いている

丸駒温泉の名物は「足元湧出(あしもとゆうしゅつ)」の天然露天風呂

普通の温泉は、源泉から引いてきたお湯を湯船に注ぎます。でもここは、湯船の底から直接お湯が湧いているのです。つまり、湧き出している場所そのものに浸かることになります。

この方式のお風呂は、全国でも20ヶ所ほどしかないと言われています。

湯船の向こうがもう支笏湖。石垣一枚を隔てて、湖とつながっています

季節によって、湯船の深さが変わる

もうひとつ面白いのが、この露天風呂が支笏湖と水位が連動していることです。

湖の水位が上がれば湯船も深くなり、下がれば浅くなる。季節によってお湯の深さが変わるという、なんとも贅沢というか、自然まかせなお風呂です。

火山を歩いたあとに、その火山の恵みに浸かる。しかも湖と一体になったお風呂で。この流れが、北海道の山のいちばん贅沢なところだと思います。

日帰り入浴もできます。ただし曜日や時間が限られることがあるので、立ち寄る予定なら公式サイトで確認してから向かうのが安心です。

※このセクションの写真は、丸駒温泉旅館さんに掲載の許可をいただいて掲載しています。浴場内は通常撮影できませんので、ご注意ください。

まとめ:境目を歩く山

樽前山は、七合目まで車で上がれて、3時間で周回できて、しかも噴気を上げる火山を間近で見られる。とても効率のいい山です。

でも私がまた登りたいと思ったのは、そこではありません。

林が終わって、いきなり裸の山になるあの一歩。自然が切り替わる境目を、自分の足で越えていく感覚。あれは写真では伝わりきらないので、ぜひ歩いて確かめてほしいです。

そしてこの日、腰はまったく問題ありませんでした。私は椎間板ヘルニアで入院した経験がありますが、歩幅を狭くして、荷物を軽くして歩けば、こういう山も楽しめています。

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